城崎温泉旅館の経営者が考える、社員が輝く会社経営の極意 | Dekiroute[デキルート]
インタビュー

城崎温泉旅館の経営者が考える、社員が輝く会社経営の極意


温泉旅館「湯楽」を城崎温泉でも一二を争う人気旅館に育て上げると同時に、旅館業だけでなく様々な事業展開にも挑戦してきた株式会社ユラク。若干35歳にしてその3代目社長となった伊藤清範代表取締役に、インタビューを行いました。
 
 

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伊藤 清範 氏

株式会社ユラク 代表取締役社長
1978年生まれ。摂南大学経営情報学部を経て、2001年株式会社ユラクに入社。同社の観光事業部、海産物販売店舗「朝市広場」に配属される。2005年、同店の店長に就任、市場での買付業務、グル-プ店舗全体の魚介類仕入れ、販売、店舗運営全般に携わる。2008年、観光事業部「湯楽」に転勤。同年、観光事業部の取締役観光事業部長に就任。2012年、株式会社ユラク代表取締役社長に就任。

 
 

「城崎温泉」というブランドに甘えていてはいけない

–創業のきっかけは?
ユラクグループの創業は、祖父の代までさかのぼります。私の祖父母は豊岡市の農家の出身だったのですが、城崎の温泉旅館に住み込みで働くこともしていました。そのなかでも一生懸命に働き、祖父は支配人の立場を任されるまでになりました。そこで一念発起して、家族ごと城崎温泉に移住して民宿の経営を始めることになったのです。
 
しかし、この一帯は日本で2番目に古いといわれる旅館もあるほどの歴史ある旅館街です。そのため、簡単には旅館を開く場所が手に入らなかったそうです。そして山奥まで行ってようやく見つけたのが、現在の「湯楽」がある場所でした。ですので、今でも山奥の旅館としてやっていますから少し分かりにくい場所にあって、ご不便をお掛けすることもあります。
 
–現在の事業内容や会社を継がれた経緯を教えてください。
先代である父親は、旅館業に関連する様々なビジネスにも手を広げてきました。たとえば、かつては旅館でも結婚式や法事といった冠婚葬祭をする機会が多くあったため、引き出物やギフトなどの販売、仕出し料理の提供といったこともやっていました。父親はこうした仕事をそれぞれ自社ブランド化して、ビジネスとして立ち上げました。
 
こうした旅館だけに留まらない多角的な事業形態が、結果として視野を広げることにもつながったと思っています。ビジネスの世界は城崎温泉のブランドだけでやっていけるような甘いものではないということを、身をもって知ることができたからですね。
 
私自身は、大学を卒業してすぐに実家であるユラクグループに入社しました。そのなかで板前さんたちと一緒になって働いたり、海産物の仕入れを行ったりしながら勉強してきました。原価を下げてより高価値な料理を提供するための生命線として、社長になった今でも毎朝6時には市場に出向いて、仕入れを担当しています。
 
35歳にして会社を引き継ぐことになったのですが、それには「自分が健在であるうちに次の世代に渡したい」という父親の想いがあったようです。一方で私は父親が経営する姿を見ながら、昔ながらのやり方ではこれからやっていけなくなる、変える必要があると強く感じていました。働く社員がもっと輝けるような会社を作り上げるため、今も挑戦を続けています。
 
 

お客様に満足されるサービスのためには、新卒の力が不可欠

–採用活動について、どのような取り組みをされていますか?
私たちは、新卒採用にこだわって採用活動に取り組んでいます。
 
我々サービス業は人が資本だと考えております。社員の接客サービスレベルの向上こそがお客様の満足度を高めることにつながり、会社に利益をもたらしてくれるのです。お客様の満足度を向上させるためには、若い力が必要です。若い方は何事にも積極的に取り組んでくれます。覚えも早く、何より未来があります。会社の未来を考えた時には、若い優秀な人材の活躍は必要不可欠となってきます。
 
また新卒にこだわるのは、新卒の方は古いやり方や常識に染まっていない原石であるからです。私たちの教育、指導を素直に受け入れ取り組んでくれます。中途採用の方は社会人経験はある一方で、これまでの経験や知識からしか物事を判断せず、また前の職場の経験を持ちこんだり比べたりする傾向があります。それは良い作用をもたらす場合もありますが、ユラクにはユラクのカラー(組織風土)があり、同じ考え方や意識を共有している社員が集まる事でより強い力を発揮します。
 
よって新卒採用を積極的に展開し、ユラク人として1から教育し、経験を積んでもらう事こそ会社に愛着を持った優秀な社員に成長する近道だと考えています。

–採用活動において課題に感じることは何でしょうか?
学生さんが入社したいと思える会社になること、ここで働けば成長できるし努力がしっかりと評価されるのだと思えるような会社を作っていくことが、一番の課題だと思います。近年は少子高齢化が進み、これから学生の数はますます減少していきます。全国的に企業では人手不足に陥り、お客様がいても営業できないホテルや旅館も増えているのです。
 
それを克服するために、外国人労働者の受け入れ、高齢者・主婦層のパートタイマーの採用や雇用延長、定年の延長なども盛んに行なわれておりますが、やはり企業にとっては新卒の学生は雇用の最重要課題であり、新卒求人にかける経費も増加せざるを得ません。
 
また、内定が決まりやすい時代になっていますから、内定をたくさん取ってから辞退されるケ-スも増加していると聞きます。今後は学生さんにもっと企業のことを知ってもらうための広報活動、また社内の労務環境の整備を行っていくべきだと考えています。
 
 

 
 

勉強熱心で、当たり前のことがしっかりできる人が成長する

–伊藤社長は、入社する社員にどのような力を求めますか?
何事にも興味を持って積極的に取り組む勉強熱心な方と、そうでない方で差が出ると思います。私たちの会社には、やりたい事を妨げる上司もいませんし、失敗を恐れて何もしないより前向きにチャレンジして失敗すべきだと考えています。そのチャレンジに対してのプロセスが大事なのであり、努力した分だけ結果は裏切りません。結果を次に繋げていける人ほど優秀な社員であり、伸びる社員だと思います。
 
それから、人としての基礎教養がしっかりと備わっている人に来ていただきたいですね。挨拶や返事がしっかりとできる、そうした当たり前のことが、社会人になってもできない人が往々にしています。それができない学生はいくら頭が良くて仕事ができたとしても、周りの人から好かれ愛される存在にはなりません。
 
その人がいるだけで周りが明るく幸せになれるような、尊敬される要素を持った方こそがどんな職場でも必要とされる人財であると思います。

–どのような社員教育や育成を実施していますか?
新卒の学生さんに対しては、まず入社にあたり丸2日間の集中座学を実施しています。そこで経営理念や社会人の心構え、就業規則などを学んでいただき、その後はマンツーマンでの現場指導を行いながら、実践研修と座学研修を同時に進めていきます。また入社3ヶ月の試用期間内においてロールプレイング研修を日々行い、細かい指導を行っております。
 
外部でのフォローアップ研修も用意しており、入社から3ヶ月・半年・1年・3年を目安に参加していただいています。また実践型教養座学カリキュラムとして、新卒社員は15講座を必須科目とし1年をかけて学び、技術や知識、教養を身に付けていく制度を設けているのが特徴です。具体的には接遇やマナー、英会話、ホスピタリティ座学などの学科。加えて着付け講座、花道講座、茶道講座などの実習も行います。プロの目線で指導教育を行うことで自立型の社員を育成するため、これらは外部講師を社内にお迎えして実施しています。
 
なお、入社2年目以降の社員に関しては一部の講義は選択科目として、必要な科目のみ受講してもらっています。より多くの社員が参加しやすいよう、受講費用は全て会社負担です。
 
 

働きたくなる環境を整備し、旅館業の成長に本腰を入れていく

–今後どんな会社にされたいと思われていますか?
まずは社内の環境整備を徹底することが必要と考えています。具体的に言えば人事制度やキャリアアップ制度、福利厚生などの見直しです。「企業は人なり」という言葉のとおり、社員が働いていて夢や目標の持てる会社、働いていて楽しい会社、やりがいがある会社であるべきです。つまりは学生さんたちにここで働きたいと思われる会社になるよう、組織により磨きをかける事が第一ですね。
 
いくら採用活動にお金をかけ、沢山の方に入社していただいても、すぐに辞めてしまったら学生さんにとっても会社にとっても不幸なことです。組織がより魅力あふれる会社になるように経営陣が努力することがまずは大切で、その努力しだいで優秀な学生も集まり、より質の高い接客サービスを行う事のできる集団に進化していくのだと思います。
 
ですから社員や新しく応募してくれる学生さんに何かを求める前にまずは組織改革を行うべきで、社員1人ひとりが120%の力を発揮できる仕組みを作ることで皆が輝き、その力が会社にも利益をもたらすことになるのです。

–これからどんな事業やサービスを展開されていく予定ですか?
メイン事業である旅館業の拡大を今後目指したいと考えています。旅館というのはいまだに「板長」「女将」などの言葉が残っていることからも分かるように、古くから続いてきた特殊な業界です。そのため、古い考え方のままやっている経営者も多いと感じています。城崎温泉においても、家族経営で続いてきた「家業」のままにとどまっている旅館が多い印象です。
 
たとえば現在、調理場で板長を務めている社員は主婦の方です。9時から17時まで勤務して、お子さんをお迎えに行くためサッと退社していきます。これも今までにはあり得なかったことなのです。
 
勤務時間を改革したり、ボトムアップで意見が反映される仕組みを整えたりして、働きやすく1人ひとりが輝ける会社を目指して作ってきましたが、それがお客様の更なる満足度向上に直結しています。お客様の前にいつでも笑顔で出ていただくためには、楽しんで働ける環境であることが必須だからです。結果として、私が社長に就任した当初落ち込んでいた業績を、5年間で大幅に回復させることもできました。
 
だからこそ、自信を持って本業の拡大に乗り出したいと考えています。後継者不足で閉業しなければならなくなっている温泉旅館もたくさんありますが、M&Aなどを通じてそれを引き継ぎ、私たちのやり方でよりよいサービスを手掛けていけるようにしたいですね。
 
 

 
 

1つの目標に向けて、組織として努力する経験を

–大学生のうちにやっておいた方が良いと思うことはありますか?
スポーツ、サークルなど何でも構いませんが、組織に所属して1つの目標に向けて努力するという経験を得ることは非常に大切だと思います。接客サービス業においては社員同士が協力して連携を取る事が多々あり、お客様の満足のために皆で力を合わせて努力する必要があります。またそこで上下関係をしっかりと学ぶことも非常に大切です。
 
社会人になっても職場での人間関係は仕事がスムーズに進む最重要要素です。礼儀作法、言葉遣い、利他の精神などをそういった組織の中でしっかりと学んでいる方とそうでない方とでは、おのずと差が出てきます。

–社会人になる上での心構えでアドバイスはありますか?
やると決めたことは、現場の状況に不平不満を持たず、目の前の事に全力で取り組む事が大切だと思います。無駄な仕事は何もなく、1つ1つの仕事に意味があります。何事にもプラス思考で、前向きにチャレンジする事が一番大切です。
 
またうわべだけ丸暗記をせず、その事に対する意味、意義をしっかりと考えながら取り組む事が大切です。点で覚えるのではなく、線を繋げて覚える事で応用が利くようになります。そんな思考を持って、仕事に取り組んでいただきたいと思います。
 
 
■ユラクに興味を持った方はHPへアクセス!
http://www.yuraku-group.co.jp/
 
 

【会社名】株式会社ユラク
【業種】宿泊、小売販売、飲食、ITなど10ブランドの店舗を運営
(メイン事業は宿泊業「城崎温泉 湯楽 Kinosaki Spa&Gardens」)
【社員数】100名(パート・アルバイト含む)
【所在地】
本社(兵庫県豊岡市中陰639)
湯楽Kinosaki Spa&Gardens(兵庫県豊岡市城崎町湯島844)

この記事を書いた人

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reimi ibuki

インターン生/神戸女学院大学文学部
2017年3月、長期インターンシップ生として、株式会社インデンに入社。インバウンド事業部で、パートナー企業のフォロー、広報・取材、および自社メディアの立ち上げ・運営を担当。2017年6月に内定承諾。2018年4月より、人事・採用ブランドマネジメント事業部メンバーとして入社予定。

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