「生きる」をサポートする京都の福祉企業 | Dekiroute[デキルート]
インタビュー

「生きる」をサポートする京都の福祉企業


京都市の伏見区において、特別養護老人ホームや居宅サービス事業などの高齢者福祉、また認定こども園や障がい者支援など様々な分野の福祉事業を運営している、社会福祉法人・京都老人福祉協会の三代修理事長にインタビューを行いました。

roujinfukushikyokai-2
三代 修 氏

社会福祉法人京都老人福祉協会 理事長

 
 

「京都市伏見区」という地域にこだわった事業展開

–創業のきっかけは?
京都老人福祉協会は、1957年に京都市社会福祉協議会が中心となって設立した社会福祉法人です。現在、特別養護老人ホームや小規模多機能型居宅介護を中心に16箇所の施設があり、そのほとんどは中小規模のものとなっています。

もともと身寄りのないお年寄りへの支援、入所施設の運営が事業の中心でしたが、いまは高齢者福祉だけでなく、障がい者支援や子育て支援などのサービスも手掛けています。

社会福祉法人というと、経済力のある人が寄付する形で設立されたり、お寺などの宗教法人が作ったものであったりすることも多いのですが、私たちの場合はそういった特定のオーナーが存在しません。あくまで市民が市民のために運営する法人だと考えています。

私たちはすべて伏見区内のみで事業運営を行っており、他の地域や府外へと拡大する予定は今のところありません。地域によってそれぞれの状況も特性も大きく異なるため、ひとつの場所で上手くいったことが他のところでも通用する可能性はそれほど高くないと思います。それよりも、伏見区というひとつの地域を様々な角度から見つめて事業をつくることで、より大きな価値を提供できるようになることを目指しています。

–理事長に就任された経緯は?
私は長くこの法人の職員として、介護福祉士やソーシャルワーカーの方と一緒に現場で働いてきました。その後10年間で在宅部長・副理事長職を務め、理事長となりました。

京都老人福祉協会は、設立の経緯もあって行政のOBが歴代のトップに就任してきました。先代の理事長も、もとは京都市役所に勤めていた方でした。なので、私自身もまさか経営の立場につくことになるとは思ってもみませんでした。

しかし、福祉がより多様化し、求められることも大きく変わっていく時代にあって、行政が決めた路線通りにやっていくだけでは価値が出せなくなってきています。そう考えた前の理事長が、これからのことを現場経験者に任せていくために私に引き継いでくれたのだと思っています。
 

 

将来の自分が働いている姿をイメージしてもらう

–採用活動について、どのような取り組みをされていますか?
新卒採用では、まずセミナーに応募し参加していただきます。それから施設見学にも参加してもらい、次の選考に進む意思を持ってくれた方にはエントリーシートを提出してもらっています。

重要なことは、そこで将来の自分が働いている姿をしっかりイメージしてもらうことですね。後になって「来てみたら思っていたのと違った」というミスマッチが起こることは、お互いにとって不幸でしかありません。そのためには、どんな職員がどのように働いていて、どんな利用者の方がおられるのか、実際に接して確かめていただく必要があります。

それから私たちは、内定を出したからといってその人を縛り付けるようなことはしたくないと思っていて、内定承諾の期限は余裕を持って設定し、本人の意向も聞きながら決めています。色々なことに興味を持って他の業界や企業を見てきていただいた上で、それでも私たちと一緒に働きたいと思ってもらえるように、うちに来たら色々なことができるよと胸を張って言うことができる職場にしていきたいですね。

–採用活動において課題に感じることは何でしょうか?
一番の課題は入り口の部分で、応募してくれる数が少ないことですね。福祉というのは決して人気のある業界とは言いがたく、なかなか最初の段階で人が集まらないのが悩みとなっています。

ただ、応募した段階ではすでにある程度の意志を持ってくれている方が多いようで、就職サイトからのセミナー予約者の参加率は9割程度となっています。そこから実際の現場を知る事ができる施設見学へと半数以上の方が進んで下さいますね。施設見学では、何よりも施設の利用者の皆さんが良いリクルーターとなり「ここで働くといいよ」「職員さんが優しいよ」と後押ししてくださるので、その後の採用活動がとてもスムーズになります。

利用者の皆さんが「ここは良いよ」とおっしゃって下さるという事は、その利用者の皆さんと支援をさせていただく職員とのコミュニケーションがとても良好だという証明ではないかと思っています。残念ながら選考が進む中で選考・内定辞退者も一定数おられます。同じ社会福祉法人で迷われるだけでなく、民間の他業種企業であったり、株式会社が運営されている福祉系の企業との間で迷う方が多くなって来ていますね。

しかし私たちは社会福祉法人は株式会社とは違って株主への配当を毎年実施する必要がないため、今すぐお金を生まなくて
も、未来のためになる・社会に還元できる仕事に長期的に取り組むことができます。そうした利点や、私たちの理念をどのように理解し共感してもらうかが、これからの採用活動でも重要になってくると思います。

多様な福祉に対応するためには、福祉を学んでいる方だけでなく、いろいろな学部で学んできた方の力も必要になります。そんな多様な人材を獲得するために、専任の採用担当者を配置し、若手メンバーを主軸とした採用戦略チームと一緒に、パンフレットの作成や就職フェアやセミナーでの取組みを行っています。
 

 

「人はどのように生きるべきか」という哲学がある人にこそ、やってほしい仕事

–これからの人財にはどのような力を求めますか?
福祉という業界は社会の大きな変化に対応していかなければならないため、20年先、30年先を見据えて取り組んでいく必要のある仕事です。

専門知識や技術は私たちからいくらでも教えることができます。それよりも「人はどのように生きるべきか」といった根本的な哲学の部分をしっかり考えている人や、社会的意識の高い方にこそ来ていただきたいですね。そういう人財が、今後の事業を成り立たせる核となる存在に育っていくことが理想です。

また福祉というものに対して何となく憧れや良いイメージを抱いている人よりも、それに実際に関わることで辛い思いをしたり、悔しい経験をしたりしたことのある人のほうが、「辛い思いをする人を減らしたい」という強い想いや覚悟を持って頑張ってくれることが多いようにも感じます。
 
 

人間らしく働ける福祉の職場を創り出す

–今後はどんな法人にしたいと思われていますか?
「人の役に立つ仕事がしたい」という想いに応えられるような職場にしていきたいと思っています。

福祉業界では人手が足りないと言い訳をして、そこで働く人のことを頭数や労働力としてしか見ていないことが残念ながら多くあります。またとりあえずの人手をかき集めた結果、福祉の現場に入るべきでない人まで入り込んでしまうことがあり、悲惨な事件も起こっています。

サービス残業が当たり前のブラックな職場ばかりとなっている業界の現状は、福祉に対する想いや人間の善意を使い潰してしまっているとしか思えません。まず人間らしく働くことができている人でなければ、他人のために優しい人にはなれないのです。ですから私たちも、労働環境を整備すると同時に、人手が少なくても工夫して生産性を高められる集団になっていきたいですね。

–これからどんな事業やサービスを展開されていく予定ですか?
「地域に住む」、「地域で働く」ということにこだわって、事業を展開していきたいと考えています。

たとえば高齢者が老人ホームのような施設に入所しなければ介護が受けられないという状況を改善し、住み慣れた地域で自分らしく生きていくことができる環境をつくるため、サービス付き高齢者向け住宅や在宅ケアなどの分野にも積極的に進出しています。また障がい者の方への就労支援や職業訓練など、伏見区という地域でみんなが暮らせるようにするための事業を続けていきます。

現在取り組んでいる地域の活動としては、私たちの施設で朝市を開催しています。将来は法人を拠点にした村のようなものが作れないかとも考えていて、そこには学生さんたちも巻き込んでいきたいですね。私たちの目指しているところは、若者からお年寄りまでが一緒に生活できる地域をつくっていくことにあります。このことは、子どもが減って高齢者が増え続けるこれからの日本社会の課題であるとも考えています。

この記事を書いた人

投稿記事はこちら

kodai nishino

インターン生/同志社大学文化情報学部
2017年1月、長期インターンシップ生として、株式会社インデンに入社。自社の飲食店のリサーチ分析業務と、インバウンド事業部での企画戦略立案業務を兼任。現在は、人事・採用ブランドマネジメント事業部で、クライアント企業の学生向けPR支援を行う。

関連関連記事

新着新着記事